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PCカンファレンスと情報教育と私

情報教育という世界に首を突っ込もうと思ったきっかけは、2003年に鹿児島大学で行われたPCカンファレンスに参加したことでした。

当時修士2年目だった私は、進むべき道が見えず焦っていました。日本語教育の博士号を取りに進学するのか、今の専門と関係のない一般企業に就職しようとするのか、はてまた全く別の道に行くのか、そのどれにも強い意欲が沸かなかったのです。鹿児島はちょうど母の実家で、大学の同期が教師をしている土地でもありました。そんなこともあってカンファレンスに足を運ぶことにしたのです。当時は情報教育自体もよくわかっておらず、何かしら得るものがあれば、という漠然とした思いしか持ち合わせていませんでした。

カンファレンスに参加した一番の収穫は、自分の中に湧き上がった「憤り」と呼べるほどの強い感情でした。イブニングトークと呼ばれるディスカッションイベントでのことです。ある小学校教師が「情報教育の授業で児童に意欲を持って取り組んでもらう方法」として「MOUS(現在のMicrosoft Office Specialist)試験に合格させるという目標を与えるのはどうか」と提案しました。その意見に、会場の決して少なくない人が、賛同するようなアクションを見せたのです。私は驚愕しました。それが教育者の出す結論なのかと。

特定のアプリケーションの操作スキルを問う資格の取得を、職業訓練の学校ならともかく、小学校の普通の授業で推奨することに、私は猛烈な気持ち悪さを感じました。そこにいったいどんな教育ポリシーや教育的な思慮があるのでしょう。子どもたちの可能性を育むものであるべき教育を、Wordの操作能力というようなごく小さく偏った物差しに押し込めようとしている。こんな教育を自分の次の世代に受けさせたくない。・・・冗談じゃない。もうほとんど怒りに近い思いが、当時の私の頭の中を駆け巡りました。

こんなにも憤りを感じたのは、その意見が私の教育観とかけ離れていたからだけはありません。その意見が、教育という文脈で情報を捉えていないことから来ている、と感じたことも大きく関係があります。上からコンピューターを教えろと言われたから、コンピューターぐらいできないと社会で困ると言われているから、高度情報化社会と呼ばれる時代だから。そんな他人事のような事情に振り回され、教師が教育というテーマで情報を見つめていないように感じたのです。それで本当にいいのかと、分野は違えど同じ教育者として納得できない気持ちがありました。

カンファレンス終了後しばらく、悶々と考える日々が続きました。自分は情報の研究者でも現場教師でもありません。あのような場で何か言ったとしても異端児扱いでしょう。でも、それでも、あんなふうに情報教育が進展していくのを黙って見ているのは、どうしてもできないと思いました。自分のできることを少しでもしたい、外野から石を投げるだけでも意味があるのならそうしたい、そういう思いを強くしたのです。

結局私は、修士課程を修了し進学はせず、それまで趣味の域を出なかったウェブデザインを仕事として始めながら、日本語教育を中心とした教育現場に関わる道を選択しました。「教育と情報技術とがクロスする部分に対して、教育者としての思想を大切にしつつ、技術面からのアプローチをしていく」それが私の仕事だと考えています。

自分は**だからと臆することはやめました。前例のないポジションなら、それはそれで構いません。PCカンファレンス参加者で、所属のない人はここ数年私だけかもしれません。昨年と今年は分科会で発表もしてきました。情報教育系の研究会にも入りました。教育に携わっていたいという思いの強さは、当時のカンファレンスで感じた憤りと変わりありません。きっと今後も変わらないでしょう。

幸せなのは、カンファレンスを通じて、本当に教育を真摯に捉え直している人たちに出会えていることです。そんな人たちとの話は、楽しく勇気づけられるものです。2003年のPCカンファレンスは私の人生を変えました。そして、その人生を今も支えてくれているのが、そこで出会った人たちなのです。

2006PCカンファレンス関連 | 2006-08-18

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