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プロダクトだけでなくプロジェクトの教育的評価にも焦点を

分科会で、産学連携によるサイト(ネット放送局)運営にCMSを利用した事例が発表されていました。サイト構築ではなくサイト運営と書いたのは、サイト立ち上げ時はCMSを取り入れておらず、運営していくうちに出てきた問題点の改善のためにCMSを取り入れたそうだからです。

私は実際のサイトは見ておらず(現在は公開していないようです)スクリーンショットをいくつか見ただけですが、サイトの外観およびCMSの管理画面とも、きちんと作られているという印象を受けました。産学連携ということで、きちんとした制作陣がバックアップしているのでしょう。産学連携のコンテンツ作りというのは今後もっと活発に行われてほしいですし、そのためにも成功事例のPRはどんどんなされるべきだと思いますね。

でもあえてつっこむならば、コンテンツの成功という前提があるからこそ、次の一手がほしいという(ある種贅沢な)気持ちもあります。

発表は、更新作業が一部の人間に集中するという状況を変えるためCMSを導入した、という話でした。CMS導入の結果、コンテンツの更新、承認、管理などに必要な技術や知識が減ったため、複数人での分担や個人作業の軽減が実現できたとのことです。ただ気になったのは、LAMPなどの技術的な仕様やCMSの仕組みの解説に時間をかけていたこと。途中からは自社CMSツールの販売プロモーションのような感じがしました。

私はWeb制作をやっているので、少なくとも制作者の発想としては、ある程度の規模のプロジェクトにCMSを組み込むことは今や普通です。今回はオリジナルのプログラムだったようですが、個々の機能は汎用CMSツール(オープンソースや商用ソフトなど)の持つものの域を超えていないように見えました。だから、技術的な部分の説明は、あるいはCMSが今後広範囲に利用されるだろうという結論は、特に目新しいものではなかったように思います。

聞き手がWeb技術に詳しい人たちばかりではないから説明した、というのは確かに一理あるのですが、技術情報は聞き手にとって本当に重要だったか、というところに少し疑問を感じます。今回のCMSは制作会社によるオーダーメイドであったのですから、同様のことを他の人がするならば、制作会社にお願いするレベルの技術の話だと考えられます。もしこれがオープンソースや既製品の若干の改良で済んだという話なら、「こんなに簡単に導入できますよ」というメッセージになるかなとは思いますが。

完全オリジナルだろうと何かの流用であろうと、実際の現場でCMSを導入するにはいくつかのカスタマイズが必要になるでしょう。そこで重要になってくるのが、どこをどうカスタマイズするか(これはCMSツール選びにも通じる話ですが)、制作のワークフローはどうすべきか、といったことです。

教育分野の事例か企業の事例かに関係なく問題となるのが、現場のワークフローとCMSが噛み合うかという点です。導入やカスタマイズの仕方を決める話し合いにおいて、あまりに制作側の言いなりになってしまうと、「使えないCMSを入れさせられた」と現場が嘆くことになりかねません。いかにうまく話し合い、最適なCMSに仕立てるかは、Web制作者の私もよく悩むところです。それくらい難しいところなのです。

だから、この発表の事例がもし大成功だったのならば、制作側と学生とで良い話し合いがあったのだろうと思うのです。現状分析の手法、制作側と学生側の役割分担の方針、現場の声をすくい取る方法など、その具体的な部分を知りたいと思いました。

産学連携の成果物はどんどん出てきてほしいし、プロジェクトの成功事例をもっと聴きたいと思います。そしてそのうえで、聞き手が「自分たちもああいうプロジェクトをやろう」と思ったとき、それが成果を生むかどうかの分かれ目になるのが、制作側との話し合いの質だと思うのです。特に教育現場の場合、関わる学生には何を優先させるのか、プロジェクトの教育的指針は何かによって、何をCMSにし何を制作側に任せるのかが変わってくるでしょう。制作側か教師(プロジェクトリーダー)の力量がかなり問われるところですが、成功事例のエッセンスやノウハウがあれば心強いはずです。

プロダクトであるWebサイトの評価はなかなか難しいものです。制作の裏にある事情まで考慮しなければならないからです。たとえサイトの価値がそれほどでなくても、プロジェクトとしての成果は大きいという場合だってあるでしょう。今はまだプロダクト自体の数が少ない状況なのかもしれませんが、サイト制作のプロジェクト自体に教育的価値を見いだせるような事例が増えればいいなぁと思います。

2006PCカンファレンス関連 | 2006-08-20

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