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コンピューターとマジにつきあう日々。

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デザイナーとは何をする人なのか?

2007.12.21 11:23 pm

このネタは何度も何度も書いたり言ったりしている気がするのですが、自分にとっては重要なネタなので懲りずに書きます。

西村佳哲さんの「自分の仕事をつくる」という本を読んで改めて実感しているのですが、「デザイン」というのは「ビジュアルを作る仕事」で、「デザイナー」というのは「ビジュアルを作る専門家」ではない、ということ。なのにそう思っている人は、一般人はおろかデザイナー(と呼ばれる人たち)にもたくさんいるんじゃないでしょうか。

「Webデザイン」という言葉が指す作業は、ビジュアルを作ることだけではないし、コーディングやプログラミングやデータベース構築をすることだけでもないし、その全部でもないと思います。企画、ディレクション、マネージメント、コンサルティングもWebデザイン、広報も啓蒙活動も運用管理もWebデザインの一部。もっと言えば、ユーザーがWebを利用することもまたWebデザインなのではないかと思います。目に見えるものだけでなく経験を扱うものであり、その認識のされ方や価値、社会に与える影響を扱うものでもある、それがデザインではないかと思うからです。

Web Designingの連載で永原康史さんが指摘していましたが、Webデザインは一人でやれる領域が非常に広いものです。Webサイトは最初から最後まで手がけることができる。これが工業デザインであればそうはいきません。設計する人と工場でそれを作る人は、たいていの場合一致しないでしょう。そして作りながら即使うということができるのも、Webデザインの特徴です。工業デザインなら、設計をしながら完成物を手に取ることはできません。

ただ、だからといって「Webデザイナーなら全ての工程を高いレベルで行えないとダメ」という意見には、私は賛同しません。Webデザイナーの中にはそういう人がいるような感じですが、誰もがそこを目指すべきだとは思いません。

Webデザイナーに求められるスキルが年々広がってきているのは、Webが可能にすることが広がり、社会的に期待される役割が大きくなったからでしょう。テキストと静止画オンリーだったのが、音や動画を扱えるようになり、体験・経験をデザインすることが可能な器になりました。生活に必要な多くのサービスを担うインフラとして、様々な個人情報を管理するツールとして、私たちの生活や人生に与える影響はどんどん大きくなっています。

そんなWebをデザインするには、様々な視点と専門性が必要になるでしょう。だから各分野の専門家が協業して作るというのも1つの回答ですし、Webの特性を生かしてひとりでやるというのも1つの回答です。Webデザイナーがどちらであるべきかは規定する必要がない、と思います。

前述したように、私はデザインという言葉の指す行為を(恐らく他の人が言うより)広めに捉えています。いくらWebであっても、デザインという行為の全てを一人で完結させられるとは思っていません。だから個人がどこまで作業するかは重要ではないと思うのですが、それは近年大手制作会社で行われているような、安易な分業制作業を支持するものではありません。

例えば、とにかくPhotoshopでグラフィックを作り続ける仕事をしていて、でもHTMLやWebの特性はよく理解していない、というメンバーがデザインチームにいる、という状況はどうなのかということ。その問題点を分かっていて、例えば新人教育などの理由でそうならいいですよ。でも「君はとにかく美しいグラフィックが作れればそれでいいから、Photoshopの腕があればいい」というようなスタッフィングを平気でするのは違うと思うんです。いろいろ事情はあるにしても。

誰がどの部分を担当するのかは別にして、メンバー全員が全体のデザインを考えながら、その中での自分の役割を果たす。それがデザイナーと呼ばれる人たちに必要なことで、例えばWebで言えば「HTMLって何か」は必要な基礎知識だと思います。たとえHTMLを1行も書かないにしても。だって、自分たちが作るものに対する理解がその程度で、どうやってデザインの本質的な作業ができるんだろうって。

デザインがいつまでたっても「きれいなグラフィックを作ること」だと一般に思われているのは、やっぱりデザイナーの仕事に原因の多くがあるんじゃないかと思います。デザイナー自身がデザインを表層的に捉えているから、そうやってデザインしているから、デザインされたものにパワーが足りなくて、それを受け取る人にデザインの持つ何かが伝わりきらない。もちろん、自戒を込めてあえて言うのですが。

追記1:
デザイナーの何たるかは、デザインに必要な技術や知識だけで規定されるのではなく、デザインに対するアプローチも大きく関わってくると思います。実際の作業範囲がグラフィックであっても、マネージメントであっても、プロデューサーであっても、それは役割の違いだけであって、偉いとか下っ端とかはないはず。

追記2:
自分がどんな工程に携わるかという問題はもちろんありますが、「デザインとは何か」という根本的な問いにきちんと向き合わないと、個々の技術やスキルを云々言ってても意味がないと思います。そのあたりを棚橋さんが別の表現で「Web屋さんって何をつくるお仕事なんですか? その職業の方は必要なスキルが多いんですか?:DESIGN IT! w/LOVE」というエントリーで書いててくれてます。参考までに。

category: 社会, Web業界

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